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ウェイトレス?おいしい人生のつくりかた
原題 | WAITRESS |
出演 | ケリー・ラッセル ジェレミー・シスト ネイサン・フィリオン シェリル・ハインズ アンディ・グリフィス エイドリアン・シェリー |
監督 | エイドリアン・シェリー |
製作 | アメリカ/2006年/108分 |
分類 | ドラマ、ラブロマンス |
感想 | ★★★★☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
アメリカ南部の片田舎。小さなダイナーのウェイトレス、ジェナはパイ作りの天才。その時の気分をそのまま反映したオリジナル・レシピで作るユニークなパイの数々は、胃袋ばかりか心も満たしてくれると町の評判だった。ところが、私生活では嫉妬深い夫アールに支配される苦痛なだけの毎日を送っていた。同僚の友人と相談していよいよ家出を決意した矢先、予想外の妊娠が発覚する。家出も出来ず、かといってアールの赤ちゃんも産みたくないと、すっかり八方ふさがりのジェナ。落ち込む一方だった彼女の前に、新任の産婦人科医ポマターが現われる。優しく誠実なポマター先生に次第に心惹かれていくジェナだったが…。
review
とりあえず稼いで奥さんを食わせてやってるけれど、上司のグチを言う以外に何の取り得もありゃしない。
とにかく、自分の言いなりになる奥さんのことが大好きで、すこしでも思い通りにならないものなら暴力で何が何でも従わす。
一字一句違いなく、自分の言うとおりに褒め称えてくれる素直なカワイイ奥さん。
彼女が渋々従ってくれているのは知っているけれど、渋々でも最終的には服従する姿を見るのがまた快感なのだ。
自由なんて与えませんよ。
必要なものなら、全部俺が買ってやっている。
俺が食わせてやってるんだから、黙って俺のことだけ見て愛してろ。
―――で、今日の稼ぎは幾らだったんだ?
自由になんてさせてやるもんか、全部寄越しな。
……はっきり言って前半の30分くらいは、最低な男の見本市のような旦那にムカムカしっぱなしで、「こんな男とは即刻別れちまえっ!!」と何度も唇を噛み締めてしまうのだけれども、気持ちが悪くなるくらいに半端ない描き方がまた素晴らしいところなんですな。
結婚するなり性格の変わってしまった旦那から逃れたい一身で、日々の大半を彼から逃れることばかり考え続けているジェナ(ケリー・ラッセル)。
自分の稼ぎを巻き上げられる一方で、こっそりヘソクリも続けているけれど、思い切って離婚して独立するには資金が心もとなさすぎる。
そうして決断できずにいるうちに、望まない子供まで妊娠してしまい、ますます茫然自失のお先真っ暗状態。
けれども、鬱々とした彼女の胸中を救ってくれているのがパイ作り。
勤めている食堂(パイの店)でも彼女の作るパイは好評で、パイのことを考えている間だけは、ツライ現実から心を離していられるから、毎日のように新作を編み出し続けていた。
まさしくそれが縁で、新任の産婦人科医ポマター(ネイサン・フィリオン)とも不倫の関係に陥ってしまうのだったが、この二人のやり取りが情熱的な割にはどこかしら体育会系で、なんとも言えず笑えます。
ポマターとの関係を深めていくほどに、どうしても自分の旦那との違いを比較してしまう。
出産の前に逃げるつもりで着々と準備を進めていたものの、なかばDVで奥さんを羽交い絞めにしている自覚のある旦那のことですから、あっけなくヘソクリも逃走計画も見抜かれて、止む無く妊娠していることを告白すれば、「産ませてやるから、子供よりも俺に今以上に愛情を捧げると言葉に出して誓いな」と子供っぷりも大爆発。
もう終いには、どうしてガツンと言ってやらないのか?!ともどかしくさえなってしまうんですが、現実にDVで悩んでいる奥さんに多いパターンなんですよね、コレ。
逃げ出したいのに、生活のことを考えると簡単には逃げ出せない。
もちろん暴力も怖いけど、いざとなったら縋り付かれて泣き落とし。
八方ふさがりの状態でとりあえず不倫も続けていたけれど、相手の先生のほうがむしろ積極的に彼女に気持ちを預けるようになっていた。
不倫に対する罪悪感は持ち合わせているけれど、それでもついには今の状態に耐えられなくなってしまって、ついに二人は逃げ出すことを決意する。
が、そこでいきなり産気づいてしまったものだから、事態は暗転。
まもなく旦那が産室にまで駆けつけて、研修医である先生の奥さんが見守る中、ジェナはまもなく元気な女の赤ちゃんを出産した。
喜ぶ旦那。―――が、すかさず「約束を覚えているだろうな?」と迫ってみせる鬼畜ぶり。
しかし、母になった女は強かった。
とうとうきっぱり啖呵を切ってくれたシーンには、およそ80分間溜まりに溜まっていたストレスが、一気に綺麗サッパリ蒸発してくれました。
観る側が男性か、女性かで、かーなーりー評価が違ってしまう内容だとは思いますが、笑いあり、涙ありで本当に気持ちよく愉しめた作品でありました。
主軸である主人公の物語に、出演者全員の物語を絡めていく手腕が絶妙。
回り中から煙たがられているけれど、パイ店の経営者であるジョーとジェナのやりとりが、なんとも言えず皮肉でハートウォーミングで気分を盛り上げてくれるのです。
初の長編監督&脚本&出演作品ということで、ところどころコメディ部分にギクシャクとテンポの悪いシーンもあるにはあるのですが、それよりも心に残るシーンやセリフの言い回しが盛りだくさんで、ここまで綺麗にまとまった作品が作れるなら、断然次回作への期待も膨れ上がると言うモンです。
しかし、ご存知の通りこの作品は、監督&脚本&出演のエイドリアン・シェリーの遺作となってしまいました。
原因は、「階下の人間による、騒音問題が引き金の殺害」だそうですから、部外者が一言で断じることのできない複雑な要因が積み重なっていたのでしょう。
けれども、何の権利があって他人の命を奪うのか。
殺す以外にいくらでも、解決の道はあっただろうに……と、(作品の内容に感動したから言うのも身勝手極まりないことだと承知してますが)つくづく思わずにはいられません。
低予算のために、各シーンのテイク(撮り直し)は2回まで。
ほとんど2週間で書き上げた脚本を、ほぼ2週間で撮り切ったというからすごい。
そして、シーンのそこここにエイドリアン・シェリーの身内や知人が多数出演しています。
(音楽監督、結婚式での神父さんは友人、他にも旦那さんに実母、ベビーシッターまで)
ラストシーンは、ジェナとその娘ルルが、くりかえし「バイバ?イ♪」と言いながら、愉しげに帰路を歩んでゆきます。
娘役の女の子は、エイドリアン・シェリーの忘れ形見。
心からご冥福をお祈りいたします。
とにかく、自分の言いなりになる奥さんのことが大好きで、すこしでも思い通りにならないものなら暴力で何が何でも従わす。
一字一句違いなく、自分の言うとおりに褒め称えてくれる素直なカワイイ奥さん。
彼女が渋々従ってくれているのは知っているけれど、渋々でも最終的には服従する姿を見るのがまた快感なのだ。
自由なんて与えませんよ。
必要なものなら、全部俺が買ってやっている。
俺が食わせてやってるんだから、黙って俺のことだけ見て愛してろ。
―――で、今日の稼ぎは幾らだったんだ?
自由になんてさせてやるもんか、全部寄越しな。
……はっきり言って前半の30分くらいは、最低な男の見本市のような旦那にムカムカしっぱなしで、「こんな男とは即刻別れちまえっ!!」と何度も唇を噛み締めてしまうのだけれども、気持ちが悪くなるくらいに半端ない描き方がまた素晴らしいところなんですな。
結婚するなり性格の変わってしまった旦那から逃れたい一身で、日々の大半を彼から逃れることばかり考え続けているジェナ(ケリー・ラッセル)。
自分の稼ぎを巻き上げられる一方で、こっそりヘソクリも続けているけれど、思い切って離婚して独立するには資金が心もとなさすぎる。
そうして決断できずにいるうちに、望まない子供まで妊娠してしまい、ますます茫然自失のお先真っ暗状態。
けれども、鬱々とした彼女の胸中を救ってくれているのがパイ作り。
勤めている食堂(パイの店)でも彼女の作るパイは好評で、パイのことを考えている間だけは、ツライ現実から心を離していられるから、毎日のように新作を編み出し続けていた。
まさしくそれが縁で、新任の産婦人科医ポマター(ネイサン・フィリオン)とも不倫の関係に陥ってしまうのだったが、この二人のやり取りが情熱的な割にはどこかしら体育会系で、なんとも言えず笑えます。
ポマターとの関係を深めていくほどに、どうしても自分の旦那との違いを比較してしまう。
出産の前に逃げるつもりで着々と準備を進めていたものの、なかばDVで奥さんを羽交い絞めにしている自覚のある旦那のことですから、あっけなくヘソクリも逃走計画も見抜かれて、止む無く妊娠していることを告白すれば、「産ませてやるから、子供よりも俺に今以上に愛情を捧げると言葉に出して誓いな」と子供っぷりも大爆発。
もう終いには、どうしてガツンと言ってやらないのか?!ともどかしくさえなってしまうんですが、現実にDVで悩んでいる奥さんに多いパターンなんですよね、コレ。
逃げ出したいのに、生活のことを考えると簡単には逃げ出せない。
もちろん暴力も怖いけど、いざとなったら縋り付かれて泣き落とし。
八方ふさがりの状態でとりあえず不倫も続けていたけれど、相手の先生のほうがむしろ積極的に彼女に気持ちを預けるようになっていた。
不倫に対する罪悪感は持ち合わせているけれど、それでもついには今の状態に耐えられなくなってしまって、ついに二人は逃げ出すことを決意する。
が、そこでいきなり産気づいてしまったものだから、事態は暗転。
まもなく旦那が産室にまで駆けつけて、研修医である先生の奥さんが見守る中、ジェナはまもなく元気な女の赤ちゃんを出産した。
喜ぶ旦那。―――が、すかさず「約束を覚えているだろうな?」と迫ってみせる鬼畜ぶり。
しかし、母になった女は強かった。
とうとうきっぱり啖呵を切ってくれたシーンには、およそ80分間溜まりに溜まっていたストレスが、一気に綺麗サッパリ蒸発してくれました。
観る側が男性か、女性かで、かーなーりー評価が違ってしまう内容だとは思いますが、笑いあり、涙ありで本当に気持ちよく愉しめた作品でありました。
主軸である主人公の物語に、出演者全員の物語を絡めていく手腕が絶妙。
回り中から煙たがられているけれど、パイ店の経営者であるジョーとジェナのやりとりが、なんとも言えず皮肉でハートウォーミングで気分を盛り上げてくれるのです。
初の長編監督&脚本&出演作品ということで、ところどころコメディ部分にギクシャクとテンポの悪いシーンもあるにはあるのですが、それよりも心に残るシーンやセリフの言い回しが盛りだくさんで、ここまで綺麗にまとまった作品が作れるなら、断然次回作への期待も膨れ上がると言うモンです。
しかし、ご存知の通りこの作品は、監督&脚本&出演のエイドリアン・シェリーの遺作となってしまいました。
原因は、「階下の人間による、騒音問題が引き金の殺害」だそうですから、部外者が一言で断じることのできない複雑な要因が積み重なっていたのでしょう。
けれども、何の権利があって他人の命を奪うのか。
殺す以外にいくらでも、解決の道はあっただろうに……と、(作品の内容に感動したから言うのも身勝手極まりないことだと承知してますが)つくづく思わずにはいられません。
低予算のために、各シーンのテイク(撮り直し)は2回まで。
ほとんど2週間で書き上げた脚本を、ほぼ2週間で撮り切ったというからすごい。
そして、シーンのそこここにエイドリアン・シェリーの身内や知人が多数出演しています。
(音楽監督、結婚式での神父さんは友人、他にも旦那さんに実母、ベビーシッターまで)
ラストシーンは、ジェナとその娘ルルが、くりかえし「バイバ?イ♪」と言いながら、愉しげに帰路を歩んでゆきます。
娘役の女の子は、エイドリアン・シェリーの忘れ形見。
心からご冥福をお祈りいたします。
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Bモンキー
原題 | B. MONKEY |
出演 | ルパート・エヴェレット アーシア・アルジェント ジャレッド・ハリス ジョナサン・リース・マイヤーズ |
監督 | マイケル・ラドフォード |
製作 | イギリス/1998年/92分 |
分類 | アクション、ギャング・マフィア、ラブロマンス |
感想 | ★★★☆☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
ベアトリスは街では“Bモンキー”の名で知られる腕利きのストリート・ギャング。人殺し以外はなんでもやるミステリアスで危険な美女。そのパートナーを務める美少年ブルーノもアブなさでは彼女に負けてない。そんな2人の住処はブルーノの年上の“恋人”ポールの家。莫大な遺産を食いつぶしてしまったポールもまた、今では危険な仕事に手を染めていた。故郷イタリアを捨てたベアトリスにとって2人は家族同然の存在。彼らはスリルを楽しむかのように気軽に罪を犯していく。しかし、いつまでも続くと思っていた3人の関係は、ブルーノ18歳の誕生日に突然終りを迎える…。
review
タイトルからしてまずもって、私が好んで観るタイプの映画ではなかったので、作品を観る前にCASTを確認してみたら、ルパート・エヴェレットの出演作品でありました。
(俳優名で一括借りを行うと、よく「借りたっけ?」状態に陥ります。)
そして、レビューを書くために製作国を確認してみたら、イギリス映画だったので二重の驚き。
(てっきりアメリカ映画だと思っていたのですよね。)
しかし、言われて見れば底辺に、そこはかとなく漂っているBBC風の香る雰囲気。
思いのほかに、集中して愉しめる作品でありました。
物語は、ベアトリス、またの名を"B・モンキー"と名乗る女性(アーシア・アルジェント)が、マフィアに関係する裏の世界から足を洗う意思を固めるところから始まります。
そのときちょうど出会ったのが、後の恋人のアラン(ジャレッド・ハリス)。
彼がまた真面目であること以外は、何の取り得もないようなサエない男性で、自分のほうからベアトリスをナンパしたくせに、恋に性急なタチであるベアトリスがさくさく行動に移してしまうと、たちまち躊躇して拒んでしまう。
けれども、それまで荒ぶれる環境に身を置いていたためか、ベアトリスにとっては堅固な彼の態度が新鮮で、いつしか自分のほうこそ彼の存在に心を奪われてしまってゆく。
作中に、何度もアランがベアトリスを風呂に入れるシーンが出てくるのですが、そこに描かれている心の解放と心地好さが、そのまま後の二人の関係に繋がってゆくわけです。
そして、自分の気持ち的には「足を洗う」と決意しているものの、下手に腕が優れていただけに、過去の仲間が彼女を手放そうとしてくれない。
その一員であるところのブルーノ(ジョナサン・リス=マイヤーズ)とポール(ルパート・エヴェレット)の関係は、あんまり詳しく描かれていないので少々わかり辛い点もあるのですが、おそらく資産家だったポールが、イタリアからの移民であるブルーノとベアトリスの世話をしていたのでしょう。
悪事に手を染めてはいるけれど、心を許しあってもいる家族のような関係です。
しかし、随所に描かれているブルーノの切れ方が、現実にも(日本にも)存在していそうな切れ方で怖かった。
ルパート・エヴェレットもまた、麻薬と悪事で確実に身を持ち崩してゆく資産家で、話が進むにつれて、どんどん死相が浮かんできます。
「理想の結婚」のように、色事に長けた二枚目のお貴族様もサマになっているけれど、どっから見ても裏に陰のある役を演じさせても、本当に感心するくらいサマになっているのですよね。
かれこれ彼の出演作品を何本も観てきていますが、コメディを演じさせても笑える格好良さだし、シリアスもラブコメも完璧にこなせるし、本当に演技に幅のある役者さんなんだなァ?と思います。
(まま脚本に難がある場合もあったのだけれども、彼の演技を観ているだけで必ずそれなりに愉しめてしまうので。どんなに汚れた役を演じても、彼独特の生粋の上品さがそこには必ず存在している。)
最後はどうにかして安穏とした生活を手に入れようとしている二人。
口では「足を洗った」と言うものの、どうしても昔の仲間と縁を切りきれないベアトリスに業を煮やしたアランが、田舎で職を見つけて、住まいを見つけた上で、まるで突き放すように冷静に「僕と二人だけ。ほかに何もない生活でも耐えられるか?」と迫るシーンにはグッと来ました。
しかし悲しいかな、ジャズやR&Bに詳しくないので、マイルズくらいしか理解できませんでしたが、BGMに通奏低音のように使われている音楽もまた秀逸です。
ラストは、まァそうでもしなきゃ足を洗えないよね、と少々強引な感じも無きにしも非ずなんですが、あくまでラブストーリーのほうに主体を置いている作品なので、アクションシーンもそれほど五月蝿くないので良かったです。
二人が住まいを移した先の田舎の風景がとても綺麗。
(山の中の一軒家ふうの絶景で、そこを自転車で通勤しているものだから、次第にマッチョに鍛えられてゆくアランの姿態に、よその奥さんがうっとり目を細めるなんてオチ付き。)
そういえば、クリケットのシーンがありましたね。
欲を言えば、このシーンにもルパート・エヴェレットが出演していてくれたなら嬉しかったのにな。
(俳優名で一括借りを行うと、よく「借りたっけ?」状態に陥ります。)
そして、レビューを書くために製作国を確認してみたら、イギリス映画だったので二重の驚き。
(てっきりアメリカ映画だと思っていたのですよね。)
しかし、言われて見れば底辺に、そこはかとなく漂っているBBC風の香る雰囲気。
思いのほかに、集中して愉しめる作品でありました。
物語は、ベアトリス、またの名を"B・モンキー"と名乗る女性(アーシア・アルジェント)が、マフィアに関係する裏の世界から足を洗う意思を固めるところから始まります。
そのときちょうど出会ったのが、後の恋人のアラン(ジャレッド・ハリス)。
彼がまた真面目であること以外は、何の取り得もないようなサエない男性で、自分のほうからベアトリスをナンパしたくせに、恋に性急なタチであるベアトリスがさくさく行動に移してしまうと、たちまち躊躇して拒んでしまう。
けれども、それまで荒ぶれる環境に身を置いていたためか、ベアトリスにとっては堅固な彼の態度が新鮮で、いつしか自分のほうこそ彼の存在に心を奪われてしまってゆく。
作中に、何度もアランがベアトリスを風呂に入れるシーンが出てくるのですが、そこに描かれている心の解放と心地好さが、そのまま後の二人の関係に繋がってゆくわけです。
そして、自分の気持ち的には「足を洗う」と決意しているものの、下手に腕が優れていただけに、過去の仲間が彼女を手放そうとしてくれない。
その一員であるところのブルーノ(ジョナサン・リス=マイヤーズ)とポール(ルパート・エヴェレット)の関係は、あんまり詳しく描かれていないので少々わかり辛い点もあるのですが、おそらく資産家だったポールが、イタリアからの移民であるブルーノとベアトリスの世話をしていたのでしょう。
悪事に手を染めてはいるけれど、心を許しあってもいる家族のような関係です。
しかし、随所に描かれているブルーノの切れ方が、現実にも(日本にも)存在していそうな切れ方で怖かった。
ルパート・エヴェレットもまた、麻薬と悪事で確実に身を持ち崩してゆく資産家で、話が進むにつれて、どんどん死相が浮かんできます。
「理想の結婚」のように、色事に長けた二枚目のお貴族様もサマになっているけれど、どっから見ても裏に陰のある役を演じさせても、本当に感心するくらいサマになっているのですよね。
かれこれ彼の出演作品を何本も観てきていますが、コメディを演じさせても笑える格好良さだし、シリアスもラブコメも完璧にこなせるし、本当に演技に幅のある役者さんなんだなァ?と思います。
(まま脚本に難がある場合もあったのだけれども、彼の演技を観ているだけで必ずそれなりに愉しめてしまうので。どんなに汚れた役を演じても、彼独特の生粋の上品さがそこには必ず存在している。)
最後はどうにかして安穏とした生活を手に入れようとしている二人。
口では「足を洗った」と言うものの、どうしても昔の仲間と縁を切りきれないベアトリスに業を煮やしたアランが、田舎で職を見つけて、住まいを見つけた上で、まるで突き放すように冷静に「僕と二人だけ。ほかに何もない生活でも耐えられるか?」と迫るシーンにはグッと来ました。
しかし悲しいかな、ジャズやR&Bに詳しくないので、マイルズくらいしか理解できませんでしたが、BGMに通奏低音のように使われている音楽もまた秀逸です。
ラストは、まァそうでもしなきゃ足を洗えないよね、と少々強引な感じも無きにしも非ずなんですが、あくまでラブストーリーのほうに主体を置いている作品なので、アクションシーンもそれほど五月蝿くないので良かったです。
二人が住まいを移した先の田舎の風景がとても綺麗。
(山の中の一軒家ふうの絶景で、そこを自転車で通勤しているものだから、次第にマッチョに鍛えられてゆくアランの姿態に、よその奥さんがうっとり目を細めるなんてオチ付き。)
そういえば、クリケットのシーンがありましたね。
欲を言えば、このシーンにもルパート・エヴェレットが出演していてくれたなら嬉しかったのにな。
ムッシュ・カステラの恋
原題 | LE GOUT DES AUTRES |
出演 | ジャン=ピエール・バクリ ブリジット・カティヨン アニエス・ジャウイ アンヌ・アルヴァロ |
監督 | アニエス・ジャウイ |
製作 | フランス/2000年/112分 |
分類 | ドラマ、ラブロマンス |
感想 | ★★★★★ |
[ レンタル詳細 ] |
story
中堅企業の社長がひょんなことから舞台女優に恋してしまい、彼女にアタックするうち次第にそれまで知らなかった新しい世界にも目を開いていく姿をユーモアとペーソスを交えて描く大人のラブ・ストーリー。監督は「恋するシャンソン」のアニエス・ジャウィ。主人公のクララ役にはこれが初主演となるアンヌ・アルヴァロ。中堅企業のカステラ社長。有能な経営コンサルタントを雇っているけど、彼のエリート臭さが鼻につく。四六時中つきまとうボディガードも目障り。長年連れ添っている妻も夫より愛犬にご執心。そんなパッとしない毎日を送るカステラ社長は、ある日、英語くらい話せなければ、とコンサルタントがよこした英語教師クララをさっさと追い返してしまう。しかし、その夜付き合いで観に行った芝居の主演女優が昼間の英語教師クララと気づき思いがけず彼女に恋してしまったカステラ社長。翌日から涙ぐましくもほほえましいカステラ社長の熱烈なアタックが始まるのだが……。
review
ます、タイトル画像をパッと見てください。
誰だって、アンニュイな影を背負って、中心に位置している二枚目が主人公だと思ってしまいますよね?!
続いて、タイトル画像をじっくり眺めてみてください。
―――そう、本当の主人公は、奥の座席でハートを投げかけているおじさまです。
けれども、このおじさまが、なんとも言えずハートウォーミングで、リリカルで、ロマンティシストだったりして。
も?断然、カステラ社長に惚れました。
ムッシュ・カステラが恋をしたのは英語の教師。
企業努力とはいえ、「どうして自分が…」と、始めのうちは実に嫌々授業を受けることになってしまったものの、また一方では嫌々足を運んだ芝居の舞台で、その英語の先生が演技をしていたから驚きだ。
しかも、自分が大嫌いなはずの古典文学の芝居の中で。
彼女が出てくるまでは、奥さんと一緒にぶーぶー文句を言っていたクセに、彼女の演技に魅了されてしまった途端に、一気に周りの世界が見えなくなってしまってる。
見る間に一心に、ひたむきに、据えられてゆく視線の先を観ているだけで、なんだかこっちのほうまで恋に落ちてゆくような気分を味わってしまうのですよね。
けれども、最初から恋の相手のクララ先生には煙たがられる一方で。
(どちらかといえば、毒虫の如くに毛嫌いされてしまってる。)
それでも、恋に落ちてしまった社長はそんなの見えやしない。
なんとかして少しでも、彼女との接点を得たいとばかりに必死の努力を重ねに重ね、ついには彼女から学んだばかりの英語を駆使して英文でラブレターをしたためる。
でも、もちろんクララは茫然とし、(内心的にはかなりヒキ気味に)実につれなくムッシュの恋心に水を差してしまう。
一気に奈落の底まで転落してしまった傷心のムッシュは、大切な商談をすっぽかすほどに落ち込んで、後はひたすらクララから逃げ回り始めるわけです。
正直、やってることは、10代の少年のようなもどかしい可愛さ。
けれども、振られた直後には、自分の奥さんにちゃっかり泣き付いて見せるような可愛さもみせていて。
決してやさしいばかりの社長でないはずなのに、なぜか憎めないトコロが災いして(?)自分が雇っているはずの部下からも「僕も(自分の恋で)辛いんです。話をしましょうか?」なんて慰められたりしまってる。
実に無骨で不器用で、芸術になんか少しの感心もないような下品なおじさま。
ですが、基本的に根が毒のないやさしい性分であるために、回りのほうがムッシュを放っておけないのですよね。
そして一方ではまた、その周囲で繰り広げられる、脇役の恋模様がまたひと味も、ふた味も洒落ているのです。
監督は、女優としても出演しているアニエス・ジャウイ。
彼女の演じている恋模様が、いかにも大人の演じる恋なのです。
一度でいろんな種類の恋を愉しむことができるので、観ながら何度もお腹の奥底がくすっぐたくてたまらなくなってしまいました。
大筋的には、なんのことはない、思いっきり不倫のはずなんですがね。
それでも、最後にクララの見せる顔いっぱいに弾ける微笑には、思わずポンッ!と膝を打って喜んでしまうほどに見物です。
ああ、いいなァ?。
本当に、いくつになってもこんな風な恋をしていたい。
現役で、今現在に恋真っ盛りな世代にもオススメですが、どちらかと言うと、まったりした日常にある程度満足もしているけれど、そういえば、恋からはもうひと段落付いてしまっていて、ちょっと物足りないような感じを持て余している人に観て頂きたい一作です。
誰だって、アンニュイな影を背負って、中心に位置している二枚目が主人公だと思ってしまいますよね?!
続いて、タイトル画像をじっくり眺めてみてください。
―――そう、本当の主人公は、奥の座席でハートを投げかけているおじさまです。
けれども、このおじさまが、なんとも言えずハートウォーミングで、リリカルで、ロマンティシストだったりして。
も?断然、カステラ社長に惚れました。
ムッシュ・カステラが恋をしたのは英語の教師。
企業努力とはいえ、「どうして自分が…」と、始めのうちは実に嫌々授業を受けることになってしまったものの、また一方では嫌々足を運んだ芝居の舞台で、その英語の先生が演技をしていたから驚きだ。
しかも、自分が大嫌いなはずの古典文学の芝居の中で。
彼女が出てくるまでは、奥さんと一緒にぶーぶー文句を言っていたクセに、彼女の演技に魅了されてしまった途端に、一気に周りの世界が見えなくなってしまってる。
見る間に一心に、ひたむきに、据えられてゆく視線の先を観ているだけで、なんだかこっちのほうまで恋に落ちてゆくような気分を味わってしまうのですよね。
けれども、最初から恋の相手のクララ先生には煙たがられる一方で。
(どちらかといえば、毒虫の如くに毛嫌いされてしまってる。)
それでも、恋に落ちてしまった社長はそんなの見えやしない。
なんとかして少しでも、彼女との接点を得たいとばかりに必死の努力を重ねに重ね、ついには彼女から学んだばかりの英語を駆使して英文でラブレターをしたためる。
でも、もちろんクララは茫然とし、(内心的にはかなりヒキ気味に)実につれなくムッシュの恋心に水を差してしまう。
一気に奈落の底まで転落してしまった傷心のムッシュは、大切な商談をすっぽかすほどに落ち込んで、後はひたすらクララから逃げ回り始めるわけです。
正直、やってることは、10代の少年のようなもどかしい可愛さ。
けれども、振られた直後には、自分の奥さんにちゃっかり泣き付いて見せるような可愛さもみせていて。
決してやさしいばかりの社長でないはずなのに、なぜか憎めないトコロが災いして(?)自分が雇っているはずの部下からも「僕も(自分の恋で)辛いんです。話をしましょうか?」なんて慰められたりしまってる。
実に無骨で不器用で、芸術になんか少しの感心もないような下品なおじさま。
ですが、基本的に根が毒のないやさしい性分であるために、回りのほうがムッシュを放っておけないのですよね。
そして一方ではまた、その周囲で繰り広げられる、脇役の恋模様がまたひと味も、ふた味も洒落ているのです。
監督は、女優としても出演しているアニエス・ジャウイ。
彼女の演じている恋模様が、いかにも大人の演じる恋なのです。
一度でいろんな種類の恋を愉しむことができるので、観ながら何度もお腹の奥底がくすっぐたくてたまらなくなってしまいました。
大筋的には、なんのことはない、思いっきり不倫のはずなんですがね。
それでも、最後にクララの見せる顔いっぱいに弾ける微笑には、思わずポンッ!と膝を打って喜んでしまうほどに見物です。
ああ、いいなァ?。
本当に、いくつになってもこんな風な恋をしていたい。
現役で、今現在に恋真っ盛りな世代にもオススメですが、どちらかと言うと、まったりした日常にある程度満足もしているけれど、そういえば、恋からはもうひと段落付いてしまっていて、ちょっと物足りないような感じを持て余している人に観て頂きたい一作です。
恋する遺伝子
原題 | SOMEONE LIKE YOU |
出演 | アシュレイ・ジャッド グレッグ・キニア ヒュー・ジャックマン エレン・バーキン マリサ・トメイ |
監督 | トニー・ゴールドウィン |
製作 | アメリカ/2001年/98分 |
分類 | ラブロマンス |
感想 | ★☆☆☆☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
TVの人気トーク・ショーでゲストのブッキングを担当しているキャリア・ウーマンのジェーン・グドール。ある日、新任のエグゼクティヴ・プロデューサーのレイに一目ボレしてしまう。レイも恋人と倦怠期にあったことから二人の仲は急速に接近、ジェーンが待ち望んだ展開となり、みごとベッド・イン。やがて二人は同棲をすることになるが、引越しの間際になってレイから理由の不明なまま別れ話を切り出される。突然奈落に突き落とされたジェーン。半分やけでプレイ・ボーイのエディと同棲を始めてしまう。やがて、オス牛の生殖行動に関する新聞記事を目にしたジェーンは、きっと同じコトが人間にも当てはまるハズと、エディを研究対象に独自の理論を打ち立てるのだが……。
review
「五線譜のラブレター」で一目で惚れ込んだ、アシュレイ・ジャッドの出演作品です。
内容のほうは、「アリー my Love」や「ブリジットジョーンズの日記」を見たことがある人には、もう最初からお腹が一杯。
運命の人と思って付き合い始めていた人が、実は別れたはずの恋人と切れていなくて、同棲を始めると決めたとたんに、あっさり自分が振られてしまう。
そして、その恋人というのが会社の上司だった!
という職場を舞台にしたドタバタのラブコメディなんですが、最後は恋の相談を持ちかけた相手とひょんなことから同居することになり、はっと気がついたときには「これこそ本物の恋かしら?」とハッピーエンド。
なのに、最後までまァまァ愉しく見ていられたのは、とにかくアシュレイ・ジャッドが可愛く魅力的だったことと、ヒュー・ジャックマンの肉体美のおかげでしょうか。
途中、パンツにタンクトップ一枚という出で立ちで、アシュレイ・ジャッドがチア・リーディングするシーンがあるのですが、アシュレイ・ジャッドのバランスのよい身体の肉付きがとても綺麗だと思った。
けれども、相対的に鑑みて、何もこの作品はアシュレイ・ジャッドじゃなくても(いくらでも)演じられる女優さんはいたのではないでしょうか。
(アシュレイ・ジャッドには、もっと演技力がモノをいう役をこなして欲しかった。)
いっそのこと、キャリスタ・フロックハートが演じたほうが、もっと弾けた感いっぱいで愉しめたのかもしれません。
しかし、鑑賞後はすっきり愉しい気分を味わえるので、時間の空いてしまった時にはオススメです。
内容のほうは、「アリー my Love」や「ブリジットジョーンズの日記」を見たことがある人には、もう最初からお腹が一杯。
運命の人と思って付き合い始めていた人が、実は別れたはずの恋人と切れていなくて、同棲を始めると決めたとたんに、あっさり自分が振られてしまう。
そして、その恋人というのが会社の上司だった!
という職場を舞台にしたドタバタのラブコメディなんですが、最後は恋の相談を持ちかけた相手とひょんなことから同居することになり、はっと気がついたときには「これこそ本物の恋かしら?」とハッピーエンド。
なのに、最後までまァまァ愉しく見ていられたのは、とにかくアシュレイ・ジャッドが可愛く魅力的だったことと、ヒュー・ジャックマンの肉体美のおかげでしょうか。
途中、パンツにタンクトップ一枚という出で立ちで、アシュレイ・ジャッドがチア・リーディングするシーンがあるのですが、アシュレイ・ジャッドのバランスのよい身体の肉付きがとても綺麗だと思った。
けれども、相対的に鑑みて、何もこの作品はアシュレイ・ジャッドじゃなくても(いくらでも)演じられる女優さんはいたのではないでしょうか。
(アシュレイ・ジャッドには、もっと演技力がモノをいう役をこなして欲しかった。)
いっそのこと、キャリスタ・フロックハートが演じたほうが、もっと弾けた感いっぱいで愉しめたのかもしれません。
しかし、鑑賞後はすっきり愉しい気分を味わえるので、時間の空いてしまった時にはオススメです。
華麗なるギャツビー
原題 | THE GREAT GATSBY |
出演 | カレン・ブラック ロバート・レッドフォード サム・ウォーターストン スコット・ウィルソン ミア・ファロー |
監督 | ジャック・クレイトン |
製作 | アメリカ/1974年/144分 |
分類 | ラブロマンス |
感想 | ★☆☆☆☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
1974年度アカデミー賞受賞作品。原作は第一次世界大戦後の失われた世代の代表的作家F・スコット・フィツジェラルド。華麗なる衣装と甘美なメロディで彩られた愛の物語。
review
ほぼ8割がた原作どおりの演出です。
しかし、原作どおりなぞっていれば良いというわけでもないというべき見本のようなもの。
日本語吹き替えで観たので余計かもしれませんが、ロバート・レッドフォード演じるギャッツビーに、この作品の最大の魅力であるところの気品と優雅さが少々物足りないように感じました。
(英語のほうでは”old sport”とちゃんと話しているのに、吹き替え版でももう少し大切に扱って欲しかったな。)
ずいぶん以前に2001年製作のTV版を観たことがあるのですが、見た目の美形度だけならTV版のほうが勝っておりましたね。
(残念ながら、内容のほうは忘れてしまいましたが。)
超ナルシスティックで、強気かと思えば妙に弱気で、ストーカーかと思われるほどに恋に対して執着体質で。
ストーリーテラーである主人公は、次第にそんなギャッツビーにうんざりし始めてしまうわけですが、どこかしら憎めないところのある彼の言動に、意識しないところで彼もギャッツビーの魅力に魅了されてしまってる。
そばにいるだけで身体にまとわり付いてくるような濃厚なギャッツビーの魅力というものが、ロバート・レッドフォード版ギャッツビーには感じられなかったわけですな。
(というよりも、この頃のロバート・レッドフォードって演技が下手でビックリした)
ハマり役というのなら、断然ルパート・エヴェレットを押してしまいます。
それを見守る主人公には、ヒュー・グラントだったら最高かも。
(単に好みの問題なんですが。)
回想と現実の入り乱れている物語を、美しい形容と修飾で語ってゆく。
原作を読んで一度でその世界観に魅了されました。
もしも原作に興味がありましたら、青空文庫で公開されていますので、ぜひとも一度読んでみてくださいませ。
(コチラから。HTML版とテキスト版が選べます。)
余談ですが、マンダムのギャッツビーはこの話を語源としているそうな。
戦争と貧困、または結婚にまつわるアレコレから、なかなか大作を残せないままに他界してしまったF・スコット・フィッツジェラルド。
かえすがえすも残念です。
しかし、原作どおりなぞっていれば良いというわけでもないというべき見本のようなもの。
日本語吹き替えで観たので余計かもしれませんが、ロバート・レッドフォード演じるギャッツビーに、この作品の最大の魅力であるところの気品と優雅さが少々物足りないように感じました。
(英語のほうでは”old sport”とちゃんと話しているのに、吹き替え版でももう少し大切に扱って欲しかったな。)
ずいぶん以前に2001年製作のTV版を観たことがあるのですが、見た目の美形度だけならTV版のほうが勝っておりましたね。
(残念ながら、内容のほうは忘れてしまいましたが。)
超ナルシスティックで、強気かと思えば妙に弱気で、ストーカーかと思われるほどに恋に対して執着体質で。
ストーリーテラーである主人公は、次第にそんなギャッツビーにうんざりし始めてしまうわけですが、どこかしら憎めないところのある彼の言動に、意識しないところで彼もギャッツビーの魅力に魅了されてしまってる。
そばにいるだけで身体にまとわり付いてくるような濃厚なギャッツビーの魅力というものが、ロバート・レッドフォード版ギャッツビーには感じられなかったわけですな。
(というよりも、この頃のロバート・レッドフォードって演技が下手でビックリした)
ハマり役というのなら、断然ルパート・エヴェレットを押してしまいます。
それを見守る主人公には、ヒュー・グラントだったら最高かも。
(単に好みの問題なんですが。)
回想と現実の入り乱れている物語を、美しい形容と修飾で語ってゆく。
原作を読んで一度でその世界観に魅了されました。
もしも原作に興味がありましたら、青空文庫で公開されていますので、ぜひとも一度読んでみてくださいませ。
(コチラから。HTML版とテキスト版が選べます。)
余談ですが、マンダムのギャッツビーはこの話を語源としているそうな。
戦争と貧困、または結婚にまつわるアレコレから、なかなか大作を残せないままに他界してしまったF・スコット・フィッツジェラルド。
かえすがえすも残念です。
ビフォア・サンセット
原題 | Before Sunset |
出演 | イーサン・ホーク ジュリー・デルピー |
監督 | リチャード・リンクレイター |
製作 | アメリカ/2004年/80分 |
分類 | ラブロマンス |
感想 | ★★★★☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
9年前、ユーロトレインの車内で偶然出会い、ウィーンの街で一夜だけを共にしたアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌ。半年後の再会を約束したものの、それは果たされぬまま9年の月日が流れた。作家となったジェシーは、パリの書店で行なわれたキャンペーンの席で遂にセリーヌとの再会を果たす。喜びを分かち合う2人だったが、彼らに残されていた時間はジェシーがNY行きの飛行機に乗るまでの、たった85分間。2人はパリの街をさすらいながら、9年の空白を埋め合わせるかのように、それぞれの思いを語り合うのだったが…。
review
前作「ビフォア・サンライズ」から9年経った後の二人の話です。
前作が1995年の製作だったので、リアルに9年経過した後のイーサン・ホークとジュリー・デルピーが再び共演。
二人とも脚本を作る段階から時間をかけて関わっているので、実際の撮影に要した日数は2週間ちょっとと超スピーディ。
またもや「会話」を主体にして物語りは淡々と進んでいきますが、9年ぶりに再会した二人の様子と心の距離感が実にリアルに描かれている傑作です。
個人的にいちばん驚いたのは、二人共にとてもスリムになっていること。
まさに若さと魅力ではちきれんばかりだった美しいセリーヌが、美貌だけはそのままに9年分の人としての歴史をその身で物語ってしまってる。
そして、9年前には身体の中に夢と希望があふれんばかりに詰まっていて、無邪気に笑っていたはずの二人が、悲しいまでの現実の中に生きている。
9年前に交わした約束を果たせなかったがために、得られなかった幸福がなんともはや切ない限りです。
ラストはけっこう「え、もう終わり?」とビックリするくらい唐突に終わってしまうわけなんですが、これから先の二人がいったいどのようにして進展して行くのかは、観ている側の想像におまかせするという感じ。
しかし、5年後でも、10年後でもかまわないので、再びイーサン・ホークとジュリー・デルピーに「その後」の二人を演じてもらいたいものです。
不運としか言いようのない事情により、二つの人生を歩み始めた二人。
その人生をそれぞれの口から物語ってゆくわけですが、ちっとも「物語」として成立していない「会話」が主体であるにもかかわらず、どっぷり二人の心情に引き込まれてしまってゆく構成がまたもや秀逸。
もう主演のこの二人にしか、演じられない最高の演技だと思います。
とにかく終始切なさでいっぱいに溢れ返っているのだけれども、ラストのシーンではなんとも言えない「じれったさ」を感じてしまって、その尻の座りの悪い感じが、なんともクセになるよなたまらない感じなんですよね。
今度もやっぱり何回もくりかえし観たくなってしまう作品です。
「会話」だけでもこんなに素敵な恋の話が描けてしまうものなんだな?。
今度の舞台はパリなので余計にそう感じるのかもしれませんが、どことなくフランスの香りが感じられる全体的な雰囲気が、観終わった後もしばらくは脳裏に残ってしまう感覚が大好きです♥
前作が1995年の製作だったので、リアルに9年経過した後のイーサン・ホークとジュリー・デルピーが再び共演。
二人とも脚本を作る段階から時間をかけて関わっているので、実際の撮影に要した日数は2週間ちょっとと超スピーディ。
またもや「会話」を主体にして物語りは淡々と進んでいきますが、9年ぶりに再会した二人の様子と心の距離感が実にリアルに描かれている傑作です。
個人的にいちばん驚いたのは、二人共にとてもスリムになっていること。
まさに若さと魅力ではちきれんばかりだった美しいセリーヌが、美貌だけはそのままに9年分の人としての歴史をその身で物語ってしまってる。
そして、9年前には身体の中に夢と希望があふれんばかりに詰まっていて、無邪気に笑っていたはずの二人が、悲しいまでの現実の中に生きている。
9年前に交わした約束を果たせなかったがために、得られなかった幸福がなんともはや切ない限りです。
ラストはけっこう「え、もう終わり?」とビックリするくらい唐突に終わってしまうわけなんですが、これから先の二人がいったいどのようにして進展して行くのかは、観ている側の想像におまかせするという感じ。
しかし、5年後でも、10年後でもかまわないので、再びイーサン・ホークとジュリー・デルピーに「その後」の二人を演じてもらいたいものです。
不運としか言いようのない事情により、二つの人生を歩み始めた二人。
その人生をそれぞれの口から物語ってゆくわけですが、ちっとも「物語」として成立していない「会話」が主体であるにもかかわらず、どっぷり二人の心情に引き込まれてしまってゆく構成がまたもや秀逸。
もう主演のこの二人にしか、演じられない最高の演技だと思います。
とにかく終始切なさでいっぱいに溢れ返っているのだけれども、ラストのシーンではなんとも言えない「じれったさ」を感じてしまって、その尻の座りの悪い感じが、なんともクセになるよなたまらない感じなんですよね。
今度もやっぱり何回もくりかえし観たくなってしまう作品です。
「会話」だけでもこんなに素敵な恋の話が描けてしまうものなんだな?。
今度の舞台はパリなので余計にそう感じるのかもしれませんが、どことなくフランスの香りが感じられる全体的な雰囲気が、観終わった後もしばらくは脳裏に残ってしまう感覚が大好きです♥
ビフォア・サンライズ 恋人までの距離
原題 | BEFORE SUNRISE |
出演 | イーサン・ホーク ジュリー・デルピー アンドレア・エッカート ハンノ・ペシュル |
監督 | リチャード・リンクレイター |
製作 | アメリカ/1995年/102分 |
分類 | ラブロマンス |
感想 | ★★★★☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
リチャード・リンクレイター監督が手掛ける珠玉のラブロマンス。ブダペストからパリに向かう列車の中で偶然出会った一組の男女。二人は意気投合して列車を途中下車し、ウィーンの街をあてどもなく歩く。しかし楽しい時間はあっという間に過ぎ、やがてお互いの生活に帰る朝がやってくる…。
review
一度観始めると、停止ボタンを押すタイミングを逃してしまいます。
たとえばオート・リバース機能を使用していなくても、観終わると最後の主人公達と同じように、うっとり陶酔の溜息を吐き出して再び物語の中に戻りたくなってしまう。
激動的な何かが起こるわけではないけれど、一度なりとも恋をした事のある人ならば、愛しくて、愉しくてたまらない作品だと思います。
偶然列車の中で居合わせたジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、そのまま食堂車でひととき会話を弾ませるのだったが、一目見た瞬間からセリーヌの美しさに惹かれていたジェシーは、もうしばらく彼女と話していたくてジェシーに「街の散策に付き合わないか?」と誘った。
そうして二人は一緒にウィーンの街に降り立つわけですが、最初のうちは二人とも自分の行動に戸惑いを見せていて、列車の中にいたときとは違って恥ずかしそう。
けれども、思いつくままに会話を重ねてゆくほどに、意外なまでの互いの相性の良さを感じ始めます。
これがまた本当に、これといって取り上げるまでもないようなことを熱心に語り合うわけですが、お互いに惹かれあっているのは知っているけれども(なにしろ名前しか知らないような相手と途中下車してしまってるわけですから)、だからと言って互いの意見に媚びるような真似は一切せず、ただ淡々と互いの意見を交し合う。
何に対しても「断固とした自分の意見」を持ち合わせているのですよね。
どんなに些細なことに対しても、それを「議論」という形で戦い合わせることが当然のあり方で、会話に費やすひたむきな情熱がなんともいえず新鮮な印象でありました。
しかし、それでいて自分の育ってきた境遇や家族の話ばかりに終始することはない。
(どころかむしろ身の上話は限りなく少ない。)
よくもまあそんな話題を熱心に語り合えるものだなァ?と感心してしまうような話ばかりなんですが、このあたりが議論好きな欧州人と日本人の違いなんでしょうな。
トコトンまで自分の意見を交し合うほどに、それとなく相手の人間性に探りを入れ、少しずつ知りゆくほどにどんどん興味を深めてゆく。
最初は「あ、好みかも」で済んでいたはずの二人が、いつしか「いいな、このひと好きだなァ?」と瞳の色で物語り始める頃には、観ているコッチのほうまですっかり同じように恋をし始めているような気持ちになってしまってます。
けれども、夕暮れ時のロマンティックな観覧車の中で親密なキスを一つかわす以外は、露骨に口説くこともなく、ただひたすらにウィーンの街中を歩き回りながら会話に励んでいる。
身体の中から迸るようにとめどなく選ばれてゆく会話が秀逸で、そっちのほうにばかり集中してしまうものだから、美しいウィーンの街並みもなんとなく見過ごしているような塩梅です。
どちらかと言えば、笑っても、眉をひそめても、魅力的なセリーヌの表情にばかり眼が釘付けになっていましたね。
そんな彼女のいろんな表情が知りたくて、尽きることなく会話を続けてしまうジェシーの心境も理解できてしまうと言うような。
ほんの数時間前に初めて逢った相手のはずなのに、一緒に過ごしている時の心地好さに、やがて二人は互いに抱いている印象を告白することになる。
その手段がまた、何とも言えず可愛くて。
カフェで向かい合ったテーブル席で、互いの身内に電話をしている演技を始めます。
初めは恥ずかしがって「ねえ聞いてよ、私ったら列車の中で知り合った初対面の男性と途中下車してしまったのよ。クレイジーだわね」なんて冗談に紛らせてしまうのだけれども、機転を利かせたジェシーに「その相手に惹かれているの?」なんて訊かれてしまえば、素直に認めてしまうセリーヌ。
わずか5分足らずのシーンなんですが、映画の中でいちばんに印象に残ってしまったシーンです。
やがて人気のない公園の芝生の上で夜を過ごす二人。
夜が明けてまもなく、誰もがまだ眠っている街中を二人が静かに歩き始める頃には、全身から別れがたさを語っている。
けれども、奇跡的な一夜の恋の経験を汚したくないと思った二人は、あえて再会の約束を口に出すのを拒んでしまう。
最後の最後まで、アドレスの交換もしていなければ、電話番号を教えあうこともない。
あくまで知っているのは名前だけ。
でも、互いが互いに恋を始めていることは知っている。
このあたりの数分が、観ている側には地団駄を踏みたいほどにもどかしい展開なんですが。
二人の出会った駅のホームに、ジェシーはセリーヌを送り届ける。
発車間際の列車の前で、二人は信念から交わしてしまった約束を恨み始めて、「馬鹿なこだわり方をしている」とじれた口調で追求するも、「やっぱりこのまま別れるのが最善」とお互いにお互いを納得させあう。
しかし、我慢できていたのも発車のベルが鳴るまでで、急かされるように再会の約束を交し合う。
それでも、やはり最後の最後までアドレスの交換はしていない。
あくまで、落ち合う時間と場所だけを約束しているだけに過ぎない。
やがて、それぞれに乗り込んだ列車の中とバスの中で一緒に歩いたウィーンの街並みを思い返しているのですが、一日前には知らなかったはずの鬱屈を抱え込んでいることに、しばらくのあいだは後悔に似た色濃い憂鬱を引きずってしまう。
けれども、やがてふっきれたように微笑んでみせるセリーヌの微笑の美しさに、何かをやり遂げた後に感じるようなある種の爽快感を覚えます。
とにかく最初から最後まで「会話」で成立しているこの作品。
なにしろ言葉の数が半端でないので、字幕を追いかけるのが大変なんですが、そんなの少しも気にならないほどに素敵な恋の在り方です。
そして、自分もそんなふうな恋がしたくなってたまらなくなっちゃいます(笑)。
あんまり観ていなかったはずなのに、後に残った印象的にウィーンの街並みも美しく、思わず自分も実際に二人の歩いた道程を辿ってしまいたくなってしまいますね。
何度観返してもちっとも飽きない作品です。
恋愛映画が好きなひとなら、ぜひとも一度観てみては?
たとえばオート・リバース機能を使用していなくても、観終わると最後の主人公達と同じように、うっとり陶酔の溜息を吐き出して再び物語の中に戻りたくなってしまう。
激動的な何かが起こるわけではないけれど、一度なりとも恋をした事のある人ならば、愛しくて、愉しくてたまらない作品だと思います。
偶然列車の中で居合わせたジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、そのまま食堂車でひととき会話を弾ませるのだったが、一目見た瞬間からセリーヌの美しさに惹かれていたジェシーは、もうしばらく彼女と話していたくてジェシーに「街の散策に付き合わないか?」と誘った。
そうして二人は一緒にウィーンの街に降り立つわけですが、最初のうちは二人とも自分の行動に戸惑いを見せていて、列車の中にいたときとは違って恥ずかしそう。
けれども、思いつくままに会話を重ねてゆくほどに、意外なまでの互いの相性の良さを感じ始めます。
これがまた本当に、これといって取り上げるまでもないようなことを熱心に語り合うわけですが、お互いに惹かれあっているのは知っているけれども(なにしろ名前しか知らないような相手と途中下車してしまってるわけですから)、だからと言って互いの意見に媚びるような真似は一切せず、ただ淡々と互いの意見を交し合う。
何に対しても「断固とした自分の意見」を持ち合わせているのですよね。
どんなに些細なことに対しても、それを「議論」という形で戦い合わせることが当然のあり方で、会話に費やすひたむきな情熱がなんともいえず新鮮な印象でありました。
しかし、それでいて自分の育ってきた境遇や家族の話ばかりに終始することはない。
(どころかむしろ身の上話は限りなく少ない。)
よくもまあそんな話題を熱心に語り合えるものだなァ?と感心してしまうような話ばかりなんですが、このあたりが議論好きな欧州人と日本人の違いなんでしょうな。
トコトンまで自分の意見を交し合うほどに、それとなく相手の人間性に探りを入れ、少しずつ知りゆくほどにどんどん興味を深めてゆく。
最初は「あ、好みかも」で済んでいたはずの二人が、いつしか「いいな、このひと好きだなァ?」と瞳の色で物語り始める頃には、観ているコッチのほうまですっかり同じように恋をし始めているような気持ちになってしまってます。
けれども、夕暮れ時のロマンティックな観覧車の中で親密なキスを一つかわす以外は、露骨に口説くこともなく、ただひたすらにウィーンの街中を歩き回りながら会話に励んでいる。
身体の中から迸るようにとめどなく選ばれてゆく会話が秀逸で、そっちのほうにばかり集中してしまうものだから、美しいウィーンの街並みもなんとなく見過ごしているような塩梅です。
どちらかと言えば、笑っても、眉をひそめても、魅力的なセリーヌの表情にばかり眼が釘付けになっていましたね。
そんな彼女のいろんな表情が知りたくて、尽きることなく会話を続けてしまうジェシーの心境も理解できてしまうと言うような。
ほんの数時間前に初めて逢った相手のはずなのに、一緒に過ごしている時の心地好さに、やがて二人は互いに抱いている印象を告白することになる。
その手段がまた、何とも言えず可愛くて。
カフェで向かい合ったテーブル席で、互いの身内に電話をしている演技を始めます。
初めは恥ずかしがって「ねえ聞いてよ、私ったら列車の中で知り合った初対面の男性と途中下車してしまったのよ。クレイジーだわね」なんて冗談に紛らせてしまうのだけれども、機転を利かせたジェシーに「その相手に惹かれているの?」なんて訊かれてしまえば、素直に認めてしまうセリーヌ。
わずか5分足らずのシーンなんですが、映画の中でいちばんに印象に残ってしまったシーンです。
やがて人気のない公園の芝生の上で夜を過ごす二人。
夜が明けてまもなく、誰もがまだ眠っている街中を二人が静かに歩き始める頃には、全身から別れがたさを語っている。
けれども、奇跡的な一夜の恋の経験を汚したくないと思った二人は、あえて再会の約束を口に出すのを拒んでしまう。
最後の最後まで、アドレスの交換もしていなければ、電話番号を教えあうこともない。
あくまで知っているのは名前だけ。
でも、互いが互いに恋を始めていることは知っている。
このあたりの数分が、観ている側には地団駄を踏みたいほどにもどかしい展開なんですが。
二人の出会った駅のホームに、ジェシーはセリーヌを送り届ける。
発車間際の列車の前で、二人は信念から交わしてしまった約束を恨み始めて、「馬鹿なこだわり方をしている」とじれた口調で追求するも、「やっぱりこのまま別れるのが最善」とお互いにお互いを納得させあう。
しかし、我慢できていたのも発車のベルが鳴るまでで、急かされるように再会の約束を交し合う。
それでも、やはり最後の最後までアドレスの交換はしていない。
あくまで、落ち合う時間と場所だけを約束しているだけに過ぎない。
やがて、それぞれに乗り込んだ列車の中とバスの中で一緒に歩いたウィーンの街並みを思い返しているのですが、一日前には知らなかったはずの鬱屈を抱え込んでいることに、しばらくのあいだは後悔に似た色濃い憂鬱を引きずってしまう。
けれども、やがてふっきれたように微笑んでみせるセリーヌの微笑の美しさに、何かをやり遂げた後に感じるようなある種の爽快感を覚えます。
とにかく最初から最後まで「会話」で成立しているこの作品。
なにしろ言葉の数が半端でないので、字幕を追いかけるのが大変なんですが、そんなの少しも気にならないほどに素敵な恋の在り方です。
そして、自分もそんなふうな恋がしたくなってたまらなくなっちゃいます(笑)。
あんまり観ていなかったはずなのに、後に残った印象的にウィーンの街並みも美しく、思わず自分も実際に二人の歩いた道程を辿ってしまいたくなってしまいますね。
何度観返してもちっとも飽きない作品です。
恋愛映画が好きなひとなら、ぜひとも一度観てみては?
孤独な嘘
原題 | SEPARATE LIES |
出演 | トム・ウィルキンソン エミリー・ワトソン ルパート・エヴェレット ハーマイオニー・ノリス ジョン・ワーナビー リチェンダ・ケアリー |
監督 | ジュリアン・フェロウズ |
製作 | イギリス/2005年/85分 |
分類 | サスペンス、ラブロマンス |
感想 | ★★★☆☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
会社役員を務める上流階級のジェームズは妻のアンと共にせわしいロンドンを離れ、郊外へ引っ越した。そして閑静に暮らしていたある時、ジェームズ邸に通う家政婦の夫が何者かの車に轢かれ、命を落としてしまう。近隣に住むビルの車に引っかき傷を見つけたことからビルを問いただすジェームズ。しかし、事件当時その車を運転していたのはアンと判明し、同時にビルとアンとの関係も知ってしまう。身内のため事件を有耶無耶にし、アンもジェームズのもとに戻り、すべて収束したかにみえた。そんな中、今度はビルが病魔に冒されていることを知るジェームズだが…。
review
何事に対しても神経質なほどの完璧主義。
なんですが、よくある英国紳士の代表といった程度で、オフィスで四六時中一緒に過ごしている美人秘書には眼もくれずに、ひたすら真面目に仕事をこなしているご主人が、どうしてここまでメタボロに奥さんからしっぺ返しを受けなきゃいけないのだろうかと、観ているコッチの涙がチョチョ切れてしまいました。
主演の、トム・ウィルキンソンとエミリー・ワトソンの演技に感服。
ひき逃げ事件に自分が関わっている顛末を奥さん(エミリー・ワトソン)がご主人(トム・ウィルキンソン)に話して聞かせるシーンがあるのですが、奥さんはその最中も黙々と料理を作っている。
とってもシリアスな場面なのですが、作られていく料理もとても美味しそうで、ついついそっちに眼を奪われてしまうんですが、キレた奥さんが完成した料理の皿をご主人の観ている前で割ってしまう。
そのとき見せるご主人のショッキングな表情といったら!
瞳の色だけで「せっかくの料理が…」とショックを物語り、そんなことを思っている自分にまたショックを覚えてしまってる。
そして、そのショックに追い討ちをかけるように、犯罪を告白したことでホッと安堵すらし、開き直った奥さんの口から冷静に「彼と寝たのよ」と告げられて、我慢も終焉。ショックのあまり、ご主人は庭先でゲエゲエ嘔吐してしまう。
こーゆーシーンでは、キレたご主人が奥さんを殴って…というのが定番だと思っていただけに、現状を認識しきれなくなってしまったご主人が「吐く」というのは、観てしまえば妙にリアリティを感じられてしまうだけにショッキングでありました。
しかも、奥さんが犯罪を告白するまでは性善説を唱え続けていたご主人が、一転して「自首する」と訴え始めた奥さんを引き止めようとするわけですが、ここが長年連れ添ってきた夫婦関係の怖いところで、奥さんはそれを計算ずくで言っているのだとわかってしまうので怖いのです。
それから先も、自分の立場が悪くなってくると途端に「自首する」と(あくまで弱気に)訴え続ける奥さん。
挙句の果てには、ご主人が「男と別れろ」と暗に迫って見せるのに、平気で「別れなきゃダメ? 友人でいたいの。だって、彼は私を愛していないもの」なんて。
観ていて本当にご主人が不憫で、とにかく可哀想で。
結局、恋人(ルパート・エヴェレット)と別れ切れなかった奥さんは、ご主人公認で浮気を続けることになる。
「本気で別れようと思っていたけどできなかった。彼を愛しているのかも。もしかしたら、欲情か、自暴自棄か、ノイローゼなのかもしれないけれど。あなたはどうしたいの?」
「自殺か、苦しむか? それともきみを厄介払いするのか? ―――きみを厄介払いするのは無理だから、苦しむことにするよ」
表のストーリーでは、奥さんの犯してしまった犯罪をなんとか隠し通そうとする意味でのサスペンスなんですが、むしろ「開き直った女はこんなふうに怖いんですよ!」と実にイヤ?な冷たい汗を流してしまう恐ろしい映画でありました。
こーゆー映画をですね、一度ご夫婦で鑑賞された後に、いったいどんな会話が成立するかで夫婦の親密度が計れるような気がするんですが。(余計な世話ですか?)( ̄ω ̄;)
なぜだかルパート・エヴェレットが出演している作品はひどくスムーズに借りられてしまうので、ここのところ立て続けに彼の作品を鑑賞していますが、この作品での彼の老けっぷりにはビックリしてしまいました。
実年齢的にそうではあるけれど、きっとラストの役柄つくりで(?)痩せていたのが影響しているのかもしれませんね。
(顔の皺は特にないけれど、首筋にくっきり刻まれた皺が老いの影を強調していた。)
とにかく終始、精神的な冷たい汗をかきながら物語は展開してゆくわけですが、最後はご主人の献身的な愛情に胸の奥がホロリと熱くなってしまいます。
なんてヒドイ奥さんなんだ! とは思うけど、きっと男の人はこういう女性を徹底的に嫌いになれない(むしろ守ってやりたいと保護欲をそそられてしまう)のだろうなと納得できてしまうのが不思議です。
平静は「身勝手な女」が大嫌いなんですけどね。
それでも、最後の最後では奥さんの(タチは悪いけど)限りなく自分に対して素直な行動がカワイイとさえ思えてしまいましたもの。
一度観て、溜息吐きながら二度目観て、しみじみ感心しながら三度目観ても十二分に愉しめてしまう映画でありました。
なんですが、よくある英国紳士の代表といった程度で、オフィスで四六時中一緒に過ごしている美人秘書には眼もくれずに、ひたすら真面目に仕事をこなしているご主人が、どうしてここまでメタボロに奥さんからしっぺ返しを受けなきゃいけないのだろうかと、観ているコッチの涙がチョチョ切れてしまいました。
主演の、トム・ウィルキンソンとエミリー・ワトソンの演技に感服。
ひき逃げ事件に自分が関わっている顛末を奥さん(エミリー・ワトソン)がご主人(トム・ウィルキンソン)に話して聞かせるシーンがあるのですが、奥さんはその最中も黙々と料理を作っている。
とってもシリアスな場面なのですが、作られていく料理もとても美味しそうで、ついついそっちに眼を奪われてしまうんですが、キレた奥さんが完成した料理の皿をご主人の観ている前で割ってしまう。
そのとき見せるご主人のショッキングな表情といったら!
瞳の色だけで「せっかくの料理が…」とショックを物語り、そんなことを思っている自分にまたショックを覚えてしまってる。
そして、そのショックに追い討ちをかけるように、犯罪を告白したことでホッと安堵すらし、開き直った奥さんの口から冷静に「彼と寝たのよ」と告げられて、我慢も終焉。ショックのあまり、ご主人は庭先でゲエゲエ嘔吐してしまう。
こーゆーシーンでは、キレたご主人が奥さんを殴って…というのが定番だと思っていただけに、現状を認識しきれなくなってしまったご主人が「吐く」というのは、観てしまえば妙にリアリティを感じられてしまうだけにショッキングでありました。
しかも、奥さんが犯罪を告白するまでは性善説を唱え続けていたご主人が、一転して「自首する」と訴え始めた奥さんを引き止めようとするわけですが、ここが長年連れ添ってきた夫婦関係の怖いところで、奥さんはそれを計算ずくで言っているのだとわかってしまうので怖いのです。
それから先も、自分の立場が悪くなってくると途端に「自首する」と(あくまで弱気に)訴え続ける奥さん。
挙句の果てには、ご主人が「男と別れろ」と暗に迫って見せるのに、平気で「別れなきゃダメ? 友人でいたいの。だって、彼は私を愛していないもの」なんて。
観ていて本当にご主人が不憫で、とにかく可哀想で。
結局、恋人(ルパート・エヴェレット)と別れ切れなかった奥さんは、ご主人公認で浮気を続けることになる。
「本気で別れようと思っていたけどできなかった。彼を愛しているのかも。もしかしたら、欲情か、自暴自棄か、ノイローゼなのかもしれないけれど。あなたはどうしたいの?」
「自殺か、苦しむか? それともきみを厄介払いするのか? ―――きみを厄介払いするのは無理だから、苦しむことにするよ」
表のストーリーでは、奥さんの犯してしまった犯罪をなんとか隠し通そうとする意味でのサスペンスなんですが、むしろ「開き直った女はこんなふうに怖いんですよ!」と実にイヤ?な冷たい汗を流してしまう恐ろしい映画でありました。
こーゆー映画をですね、一度ご夫婦で鑑賞された後に、いったいどんな会話が成立するかで夫婦の親密度が計れるような気がするんですが。(余計な世話ですか?)( ̄ω ̄;)
なぜだかルパート・エヴェレットが出演している作品はひどくスムーズに借りられてしまうので、ここのところ立て続けに彼の作品を鑑賞していますが、この作品での彼の老けっぷりにはビックリしてしまいました。
実年齢的にそうではあるけれど、きっとラストの役柄つくりで(?)痩せていたのが影響しているのかもしれませんね。
(顔の皺は特にないけれど、首筋にくっきり刻まれた皺が老いの影を強調していた。)
とにかく終始、精神的な冷たい汗をかきながら物語は展開してゆくわけですが、最後はご主人の献身的な愛情に胸の奥がホロリと熱くなってしまいます。
なんてヒドイ奥さんなんだ! とは思うけど、きっと男の人はこういう女性を徹底的に嫌いになれない(むしろ守ってやりたいと保護欲をそそられてしまう)のだろうなと納得できてしまうのが不思議です。
平静は「身勝手な女」が大嫌いなんですけどね。
それでも、最後の最後では奥さんの(タチは悪いけど)限りなく自分に対して素直な行動がカワイイとさえ思えてしまいましたもの。
一度観て、溜息吐きながら二度目観て、しみじみ感心しながら三度目観ても十二分に愉しめてしまう映画でありました。
アーネスト式プロポーズ
原題 | THE IMPORTANCE OF BEING EARNEST |
出演 | コリン・ファース ジュディ・デンチ ルパート・エヴェレット リース・ウィザースプーン |
監督 | オリヴァー・パーカー |
製作 | イギリス/アメリカ/2002年/94分 |
分類 | コメディ、ラブロマンス |
感想 | ★☆☆☆☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
リース・ウィザースプーン、コリン・ファース主演によるラブコメディ。アーネストという架空の名前を使い社交界で遊び回っていたジャックは、貴族の令嬢と出会い恋に落ちる。プロポーズをした彼は彼女の承諾を得るが、それは使っていた偽名のお陰で…。
review
ゲイ役じゃないルパート・エヴェレットの作品だわーい♪
と喜んでいたのもつかの間。
共演しているのもコリン・ファース♪
ま、「アナザー・カントリー」以来19年ぶりの共演ね♥
と喜んでいたのもつかの間。
イギリス版trailerによりますと、「ジェーン・オースティンの(生きた?)時代のクラシック・ラブコメディ」の呼び名の通り、私の大好きな時代のイギリスの、中流階級の男女が織り成すラブコメディ。
そこにギュッとひと絞りの渋みを与えているジュディ・デンチも共演しているとあって、なんて豪華でストライクな映画なの♥
と喜んでいたのもつかの間。
肝心の中身の内容が無いよぅ!!
コリン・ファースのあの素敵な容姿で、コミカルな演技を演じておられるので実に大変格好良い♥
ルパート・エヴェレットがまた実に彼らしくコミカルな演技がサマになっていて嬉しい♥
ジュディ・デンチも実に豪華な衣装で(紫をベースとしたドレスが本当に綺麗!で欲しいくらい♥)素晴らしい演技を披露しているのですが。
いかんせん……肝心の中身が……。
何を隠そう、巨匠「オスカー・ワイルド」が原作なんですが、これは原作が悪いのか?(それとも脚本か?)
あまりにもあんまりなので、逆に原作の小説のほうに興味を覚えてしまいました。
しかし、ここまでモエられなかったのは、主演男優ふたりがそれぞれに恋する相手の女優さんがあんまり魅力的でなかったのも……一因かな?
ともあれ、コリン・ファースは最初から最後まで格好良いので、
ルパート・エヴェレットは最初から最後まで実に絵になる色男っぷり満載なので、
ジュディ・デンチは最初から最後まで古式伝統に彩られた厳格なお母様役なので、
それぞれの俳優さんに思い入れのある方ならば、絶対に退屈しない映画だと思います!
(少なくとも私は退屈しなかった。……が、観た後に何も残らなかったのが返す返すも残念だ。ι)
と喜んでいたのもつかの間。
共演しているのもコリン・ファース♪
ま、「アナザー・カントリー」以来19年ぶりの共演ね♥
と喜んでいたのもつかの間。
イギリス版trailerによりますと、「ジェーン・オースティンの(生きた?)時代のクラシック・ラブコメディ」の呼び名の通り、私の大好きな時代のイギリスの、中流階級の男女が織り成すラブコメディ。
そこにギュッとひと絞りの渋みを与えているジュディ・デンチも共演しているとあって、なんて豪華でストライクな映画なの♥
と喜んでいたのもつかの間。
肝心の中身の内容が無いよぅ!!
コリン・ファースのあの素敵な容姿で、コミカルな演技を演じておられるので実に大変格好良い♥
ルパート・エヴェレットがまた実に彼らしくコミカルな演技がサマになっていて嬉しい♥
ジュディ・デンチも実に豪華な衣装で(紫をベースとしたドレスが本当に綺麗!で欲しいくらい♥)素晴らしい演技を披露しているのですが。
いかんせん……肝心の中身が……。
何を隠そう、巨匠「オスカー・ワイルド」が原作なんですが、これは原作が悪いのか?(それとも脚本か?)
あまりにもあんまりなので、逆に原作の小説のほうに興味を覚えてしまいました。
しかし、ここまでモエられなかったのは、主演男優ふたりがそれぞれに恋する相手の女優さんがあんまり魅力的でなかったのも……一因かな?
ともあれ、コリン・ファースは最初から最後まで格好良いので、
ルパート・エヴェレットは最初から最後まで実に絵になる色男っぷり満載なので、
ジュディ・デンチは最初から最後まで古式伝統に彩られた厳格なお母様役なので、
それぞれの俳優さんに思い入れのある方ならば、絶対に退屈しない映画だと思います!
(少なくとも私は退屈しなかった。……が、観た後に何も残らなかったのが返す返すも残念だ。ι)
二番目に幸せなこと
原題 | THE NEXT BEST THING |
出演 | ルパート・エヴェレット ベンジャミン・ブラッド マルコム・スタンプ |
監督 | ジョン・シュレシンジャー |
製作 | アメリカ/1998年/108分 |
分類 | ドラマ、ラブロマンス |
感想 | ★★☆☆☆ |
[ レンタル詳細 ] |
story
造園設計士の親友ロバートの前で失恋の苦しさを告白するアビー。子供を望む30代のアビーにとって、ケヴィンは最後のチャンスに思えたのだ。そんな彼女を優しく慰めるロバート。とても相性のいい2人だったが、恋に落ちるには一つだけ障害があった。それはロバートはゲイなのだ。しかし、ロバートは父親になることを決意し、親友同士と愛する子供との共同生活を始めるのだが…。
review
ルパート・エヴェレットってやっぱり格好良いなァ……。
ルパート・エヴェレット観たさに借りた四本目。
マドンナが主演している作品なんですが、公開当時から叩かれていただけに、レンタルのキャスティングに名前も出ていなかった。
けど、たしかに自分勝手でワガママで自己中心的できわめて利己主義的ではあるけれど(全部一緒か)いわゆるフツーの女性といったところ。
下手な女優よりも綺麗だし、演技もきわめて自然にこなしてる。
それなのに、どうしてあんなに叩かれたのかと思ったら、脚本が中途半端なんですな。
ゲイの親友のロバート(ルパート・エヴェレット)と一度だけ寝てしまったアビー(マドンナ)は、妊娠した事実を知り、ロバートに「結婚はしなくていいから、父親になって」と申し出る。
彼女との友情を何より大切に思ったロバートは、さんざん悩んだ末に了承する。
同居を始める二人だったが、子供が生まれた後もロバートは自由な恋愛を楽しみ、しかしサム(息子)に愛着が芽生えてゆくほどに、本気の恋には発展しないように自分の気持ちに歯止めを利かせていた。
そんな折、財産家の事業家とアビーが恋に落ち、あっというまに婚約してしまう。
サムの父親でい続けることを強く求めるロバートだったが、実はサムは彼の子供ではなく、アビーの元彼の子供だった。
それでも法的な親権を求めて裁判を起こすロバートだったが、完璧な条件を揃えているアビー側に対して、州法律はゲイである彼に絶望的な判決を下してしまう。
それでもまァいろいろあって、結局は週に一日・木曜日だけの面会が認められるわけなんですが、「食事が終わったらすぐに帰してね」というやり取りだけで映画があっさり終わってしまう。
「なんじゃそりゃァー?!」です。エンドクレジットに向かって。
まだしもきわめて陳腐ではあるけれど、アビーの婚約者が最低の男で、これに懲りた二人がめでたく結婚するとか、いっそ絶望を極めたロバートがサムを誘拐して国外に逃亡してしまうとか、新婚家庭に庭師としてロバートを雇って同居生活を続けるとか、同情心からロバートに気持ちの移ってしまったアビーの婚約者とのドロドロした三角関係とか、いろいろオチのつけようはあったと思うのに、ものっそい中途半端な状態で幕を下ろしてしまった脚本がダメダメですね。
前半?中盤と、それなりに展開が面白くて、特にゲイなのに子供を持つことに苦しむルパート・エヴェレットの演技が光っていただけに、この終わり方が返す返すも残念です。
あと、個人的にはマドンナのファンなんですが、ものっそい嫌な女で終わっているので、彼女に対する好感にまで影響が出てしまいました。
(でも演技はけっこう上手かったですよ)
それにつけても、ルパート・エヴェレット出演作四作品中、彼がゲイ役だったのが三作品。
彼がカミング・アウトしているゲイだから、そういう役ばかりに抜擢されてしまうのか、それとも彼が自分でそういう仕事を選んでいるのかわかりませんが、「理想の結婚」みたく相手の女優よりも美的なホルモンむんむんで、上目遣いひとつでコロッと女性を口説き倒してしまうような恋愛映画が観てみたいです。
ルパート・エヴェレット観たさに借りた四本目。
マドンナが主演している作品なんですが、公開当時から叩かれていただけに、レンタルのキャスティングに名前も出ていなかった。
けど、たしかに自分勝手でワガママで自己中心的できわめて利己主義的ではあるけれど(全部一緒か)いわゆるフツーの女性といったところ。
下手な女優よりも綺麗だし、演技もきわめて自然にこなしてる。
それなのに、どうしてあんなに叩かれたのかと思ったら、脚本が中途半端なんですな。
ゲイの親友のロバート(ルパート・エヴェレット)と一度だけ寝てしまったアビー(マドンナ)は、妊娠した事実を知り、ロバートに「結婚はしなくていいから、父親になって」と申し出る。
彼女との友情を何より大切に思ったロバートは、さんざん悩んだ末に了承する。
同居を始める二人だったが、子供が生まれた後もロバートは自由な恋愛を楽しみ、しかしサム(息子)に愛着が芽生えてゆくほどに、本気の恋には発展しないように自分の気持ちに歯止めを利かせていた。
そんな折、財産家の事業家とアビーが恋に落ち、あっというまに婚約してしまう。
サムの父親でい続けることを強く求めるロバートだったが、実はサムは彼の子供ではなく、アビーの元彼の子供だった。
それでも法的な親権を求めて裁判を起こすロバートだったが、完璧な条件を揃えているアビー側に対して、州法律はゲイである彼に絶望的な判決を下してしまう。
それでもまァいろいろあって、結局は週に一日・木曜日だけの面会が認められるわけなんですが、「食事が終わったらすぐに帰してね」というやり取りだけで映画があっさり終わってしまう。
「なんじゃそりゃァー?!」です。エンドクレジットに向かって。
まだしもきわめて陳腐ではあるけれど、アビーの婚約者が最低の男で、これに懲りた二人がめでたく結婚するとか、いっそ絶望を極めたロバートがサムを誘拐して国外に逃亡してしまうとか、新婚家庭に庭師としてロバートを雇って同居生活を続けるとか、同情心からロバートに気持ちの移ってしまったアビーの婚約者とのドロドロした三角関係とか、いろいろオチのつけようはあったと思うのに、ものっそい中途半端な状態で幕を下ろしてしまった脚本がダメダメですね。
前半?中盤と、それなりに展開が面白くて、特にゲイなのに子供を持つことに苦しむルパート・エヴェレットの演技が光っていただけに、この終わり方が返す返すも残念です。
あと、個人的にはマドンナのファンなんですが、ものっそい嫌な女で終わっているので、彼女に対する好感にまで影響が出てしまいました。
(でも演技はけっこう上手かったですよ)
それにつけても、ルパート・エヴェレット出演作四作品中、彼がゲイ役だったのが三作品。
彼がカミング・アウトしているゲイだから、そういう役ばかりに抜擢されてしまうのか、それとも彼が自分でそういう仕事を選んでいるのかわかりませんが、「理想の結婚」みたく相手の女優よりも美的なホルモンむんむんで、上目遣いひとつでコロッと女性を口説き倒してしまうような恋愛映画が観てみたいです。